青春学園中等部男子テニス部。
ここに入部してから、俺は少しおかしい。
部活に来ているのに、テニスに身が入らない。
…それもこれも、みんなあいつらのせいだ。
手塚部長と不二センパイ…
事の発端は俺が部長に負けてからだ。
部長に負けてからというもの、妙に気になって気になって、気がつけばいつも部長を目で追っていた。
部室にいる時も。
練習の時も。
試合の時も。
部長の行動を具に見ていた。
俺が王子(プリンス)ならあの人は王(キング)だ。
俺より強い、年の近い人…
あの人と俺は、似ている。
何から何まで。
だから…強く惹かれた。
自分が部長を好きなんだ、って思ってからは、積極的に近づいた。
いつも一緒に在るように。
同じ道を歩けるように。
でも、あんまり近づきすぎて、俺は気付いてしまった。
…部長の瞳が、いつも誰を映しているのか。
その瞳の先に誰がいるのか。
フッ…
できれば気付きたくなかったな。
「ね、部長…」
部活が終わり、コートで二人だけになった時、ついに聞いてしまった。
「なんだ」
答えてくれるかな?答えないかな?
「部長って、不二センパイの事が好きなんスか…?」
俺は部長の顔がほんの一瞬だけ驚いた物になったのを見逃さなかった。
すぐにいつものポーカーフェイスに戻ったが。
「さあな」
…………なんだその返事は。
「ズルイっすよ、それじゃあ答えになっていません」
俺はしつこく食い下がる。
「なぜ、そんな事が気になるんだ」
俺は部長が好きなんだよ、って言いたいのを抑えながら、部長がイチバン聞きたくない言葉をつぶやいた。
「だって、俺も不二センパイが好きだから。恋敵が部長じゃ、かなわないかな、って」
さあ、どう答える?
「そうか」
部長はそれだけ答えると、踵をかえして、行ってしまった。
う〜ん。どうだったんだろう。
今の感触は。
ま、今はいいか。
その内俺の方を向かせてみせる。
今、部長の心の中は、俺と不二センパイでいっぱいいっぱいだろうから。
「…まだまだだね。」
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