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ride on love. the prince of tennis : Tezuka×Fuji 再録:2007.08.10
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この肘は、一体いつまでもつのだろうか…。
この先テニスを続けられるのだろうか…。
不安が過ぎる。
それでも。
俺はやらなければならない。
勝たなければならない。
大和部長との約束を守る為にも。
氷帝に………。
跡部に。
この激痛を超えて。
「手塚っ…」
試合の合間、ベンチに戻った俺に不二が抱きついてきた。
「手塚…もう止めてよ…」
俺の腰辺りに顔を埋めたままつぶやく。
泣いてるのか?
その細い顎をとらえて上を向かせた。
やはり、その目には涙が浮かんでいた。
「…なぜ泣く」
「だって、だって…」
よけいにしがみ付いてくる。
「壊れちゃうよっ…手塚が…」
心配…してくれるのか?
ひどく、穏やかな気持ちになる。
そうだ。
いつもそうだった。
振り向けばいつもそばにいてくれた。
いつも優しく微笑んで。
一人暴走する俺についてきてくれた。
…その微笑みに救われたんだ。
俺はもう一度その顎をとらえて上を向かせた。
「…泣くな。俺は大丈夫だ」
お前のまなざしがあれば。
そっと頬を引き寄せて唇を押しつけた。
「なっ、何するの///!!」
あまりに驚いたのか不二の涙は止まったようだ。
そう、笑って。微笑んで。
俺を見ていろ。
大和部長の為でもなく、青学の為でもなく。
お前の為に、勝ってみせよう。
そう決意して、ベンチを後にした。
終わった…。
負けて…しまうとはな…。
……………………。
自分が今出せる全力を持って、跡部に負けた。
この屈辱はなんだ!??
この焦燥感は。
急に不安がこみ上げる。
腕に走る、鈍い痛み…。
ギリッ
強くラケットを握り締める。
…こんな腕、あるからいけない。
バンッ
左腕をベンチに打ち付ける。
こんな腕、あるからいけない。
あるからいけない。
バンッ
…一体何の為にあるんだ!!!??
半ば自暴自棄になって、何度も何度も打ち付けた。
頬にひとすじの涙がこぼれる。
何の為に…。
もう一度、強く打ち付けようとした左腕を誰かが掴んだ。
「やめておけ」
乾だった。
「お前の肩はまだ完治していない。そんなことをしていると、98%ダメになるぞ…」
治っていれば勝てたのにな…。
…………………。
次々にレギュラーが慰めにくる。
「そうだにゃ☆気にすんなって」
「そうだ、まだ越前がいる」
違う。そういう事じゃない。
バンッ
黙れ。
と言わんばかりに、また打ち付けた。
周囲は急に静かになり、暗い雰囲気が漂い始めた。
……………。
イカンな…。
部長の俺がこんなんじゃ。
少し頭を冷やしてこよう。
俺は、周囲の物言いたげな視線を振り切って、一人水飲み場へ向かった。
頭から水を被る。
沸いた頭が冷えて鮮明になってくる。
しかし考えは巡り巡って、同じ疑問にいき当たる。
…何の為にこの腕はあるのか。
壊したい衝動に駆られる。
また打ち付けようとその腕を持ち上げた、その時だった。
!!!!??
誰かが後ろから抱き付いてきた。
「誰だ」
尋ねても答えない。
無理矢理その腕を剥がしてコチラを向かせると、不二だった。
………。
また、泣いているのか…!!???
俺が泣かせた…!!???
不意に切なくなって、その腕を引き寄せ、抱きしめた。
「泣くな…頼むから」
お前の涙を見ていると、俺まで泣きたくなってしまう。
不二は何も答えずにただ抱きついて涙を流していた。
そっとその髪を撫でてみる。
心が落ち着く。
さっきまでは素直に受け入れられなかった皆の言葉が胸を打つ。
あぁ。
…思い…出した…。
この腕は、俺のこのどうしようもない腕は、愛しいものをいだくため、ここにある。
この腕じゃないとダメなのだ…。
他の誰の腕でもない、壊れたこの俺の腕。
また、見失う所だったな…。
まったく、不二にはいつも驚かされる。
「もう大丈夫だぞ」
そっと囁いてみると、不二が顔を上げた。
その顔にはまだ涙が浮かんでいる。
「心配かけたな。俺はもう大丈夫だ」
普段しない微笑みでしっかりと不二を見つめた。
ぱぁぁぁ
不二の表情がとたんに明るいものに変わった。
そうだ。また戦えばいい。
今度はちゃんと治して。
治れば怖いものなんて何もないだろう。
お前をこの腕に抱いて、何一つ。
〜fin〜
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