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目眩 the prince of tennis : Tezuka×Fuji 再録:2007.08.13
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太陽の光に透けて輝く亜麻栗色の髪。
すんなりと白く伸びる手足。
そんな不二に見惚れていると、横から邪魔が入る。
「不二〜」
言いながら菊丸が抱き着く。
本人に悪気はないらしい。
そうは分かっていても、心穏やかでない手塚は、ここぞとばかりに言い渡した。
「菊丸!グランド10周!」
「にゃにい〜!」
菊丸はため息をつきながらコートを出た。
「手塚!」
「なんだ」
「ボクも走ってくる!」
不二も菊丸の後を追うようにしてコートを出ていった。
そんな恋人の背中を追いかけながら、手塚はそっと、ため息をついた。
「エージ、一緒に走ろう」
「にゃ?不二も走れって言われたの?」
「ううん、違うけど、エージに相談があるんだ☆」
なになに、と、エージが聞いてきた。
「ボク見ちゃったんだ。手塚が先生に留学を勧められてる所・・・」
「えぇっ!?」
「どうしたらいいんだろう・・・ボクは」
エージは何も答えられなかった。
そのまま二人は無言で10周走り、コートに戻った。
…やつあたりだな。さっきのは。
手塚は一人反省していた。
昨日担任に留学の話を持ち出されていた。
それは1年の頃から視野に入れていた事だったが、3年になって不二と想いが通じてからは、なるべく考えないようにしていた事だった。
不二とテニス。
目の前に広がる、究極の選択。
どっちも別な所でイチバンなだけに、選べなくて手塚をイライラさせた。
留学したら何年で戻れるか分からない。
手塚にとっては、不二と離れたくないという事が優先事項で、そこをどうするかという事が最大の悩みだった。
ねぇ、手塚。
ボクはどうしたらいい?
優しいキミはボクが行かないでって言ったら、その通りにするだろう。
…でもそれじゃ、君を殺すことになる。
テニスをしないキミなんて、考えられないよ。
世界にはばたく重要な時なんだ。
分かってる。十分な程に。哀しいくらい。
それでも、ボクは・・・。
「・・・っんん!」
激しく唇を吸われて不二があえぐ。
「だめだよ、こんなとこじゃ・・・」
他に誰もいない教室で、必死に顔を背けようとするが、手塚はそれを許さない。
「ふぁっつ・・・」
手塚の唇が徐々に下がって行く。
「ね、ボクの事好き?」
手塚は例のごとく答えない。
やっぱり言ってくれないんだね。キミは・・・。
こんな事をしてても。
これが最後のチャンスだよ。手塚。
「手塚、ボクの事好き?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「不二、さっきは悪かったな。最近少しイライラしててな。こんな所で乱暴にしてしまったかもしれない」
手塚が優しくボクの髪をなでる。
「ううん。大丈夫だよ」
手塚は優しい。ボクは大事にされていると思う。
いままでどれくらいこんな優しい時間を過ごしてきただろう。
こんなに手塚の事が好きになってしまって、どうなってしまうんだろう。
でも、昨日決めたんだ。
今度アノ質問に手塚が答えてくれなかったら・・・・・・・・・
「別れよう」
愛してる、愛してるよ手塚。
だからこそボクはキミの荷物になりたくない。
キミはきっと有名になる。
そんな時に男の恋人がいてはマズイんだ。
でも。
好きなんだ、こんなにも、キミのことが。
だから最後にアノ質問をして、キミが答えてくれなかったら、ボクを好きじゃないんだって思う事にした。
…別れられると思ったんだ。
手塚は言われた事が理解できないようで、何も答えなかった。
教室の一点を見たままピクリとも動こうとしなかった。
ボクはそんな手塚を一人残して、慌てて帰路についた。
一人で帰る家路はとても淋しくて、泣きながら歩いた。
自分で勝手に決めたのに、何でこんなに哀しいんだろう。
なんでこんなに涙がでるんだろう。
ボクは間違っているだろうか・・・?
to be...
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