Finder out    the prince of tennis : Tezuka×Fuji  再録:2007.08.13
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ね、エージ」
「にゃ?なに、不二?」
後ろの席から声を掛けられて振り向く。

窓から入る光でまぶしそうな不二が眼に入ってドキッとした。
ああ、キレイだな、と素直に思う。

英二がそんなことを考えているなんて、少しも思ってない不二は、
「先輩たちの卒業式の写真ができたんだ☆」
と、うれしそうに話を続け、ボクもまだ見てないんだけどね、と鞄の中から取り出した。









先輩たちの卒業式当日、ボクはカメラを持ち出した。

「先輩〜撮りますよ?」
元テニス部員の先輩たち一人一人を現レギュラー全員で回った。

「結構大変だな、人数が多いと」
いきなり手塚に話し掛けられて、ドキドキしながら、
「うん、そうだね」
って、それだけ答えた。

この頃のボクは、もう手塚を好きだって認識してしまっていて、どう接したらいいのか迷っていた。

男に対して恋愛感情だなんて、おかしいのかな?ってエージにだけ相談してたんだ。

「不二〜」
エージがコソっと話し掛けてきた。
「何だい?」
「メモリー余ってる?」
「?ウン。まだ沢山撮れるよ」
「貸してみ!皆で撮ってる振りして、手塚の写真撮ってやるよ!」
「えっ!」
不覚にも少し赤くなってしまった。エージの気遣いがうれしくて。
「ありがと☆」
「うまくいけば2ショットも撮れるかもな、さ、近くにいけよ」
「…うん!」

でも、世の中そんなに甘くなかった…

さすが我らが鬼部長。
カメラの前でも笑わない。

エージがどんな手を使っても笑うことはなかった。

「ごめんな」
「いいよ、エージ。言ってくれただけでも十分うれしかったよ」
と、一応答えておきながら、エージから返ってきたカメラを見て、一人うな垂れてしまった。

やっぱり手塚に笑えっていうのは無理なのかなー?

ちゃっかり写真撮ろうっていうのが無理なのかなー?

なんて考えていたら、
「どうした?」って手塚が近づいてきた。

あわわわ!

もうボクはどうしていいか分からなくなって、
「メ・メモリーがまだ余ってるんだ」
って口走っていた。
「そうか、何か思い悩んでいるようだったからな、安心した」

「………………!!!!!!」

手塚が微笑んでる!
なんとなく手塚と顔をあわせて話ができなくなっていたボクは、安心した、なんて言葉にうっかり顔をみてしまった。
…反則だな〜。もう!
気がついたらボクはカメラのシャッターを押していたんだ。










思えばあの時だったよな。
エージと写真を見ながら考える。

「しかし、オレが撮ったのどれも見事に笑ってないな」
ちょっと淋しそうにエージが言う。
「しょうがないよ、写真撮られるのあまり好きじゃないんだって」
「でもな〜」

確かにこの時だ。告白の決意をしたのは。
エージが写真を撮ろう、なんて言わなかったら、まだ今ごろ一人で悩んでいたかもしれない。

あーでもないこーでもないと言いながら写真をみているエージに向かってささやいた。
「ありがとう」

「にゃ?何?イキナリ」

ありがとう、エージ。ホントにいい友達だよ。

「そっかー、手塚って不二の前ではこんな風に笑うんだ」

うん。うん。ソウダヨ。手塚はこんな風に笑うんだ。

この1枚はもちろん大切に持っておくけどね、この時みたいに写真がどうしても欲しいと思わなくなったんだ。

だって…………

「待たせたな、不二」
「てっ手塚!」
手塚の瞳がボクの瞳を覗き込む。

…だって、写真なんかなくても、実物がいつも近くにいてくれるから。
ボクはいそいそと立ち上がる。

「じゃあね」
「またな」
エージに手を振って二人で教室をでた。




〜fin〜

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