花吹雪    the prince of tennis : Kikumaru×Fuji  再録:2007.08.10
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ひらひらひらひら花びらの舞う、桜の咲く季節に、オレらは出会った。


『運命の出会い』


そう……思った。


「エージ!!うろちょろしないでちゃんと付いてきなさい!!!」
母親の怒鳴り声が聞こえる。
うっさいにゃ〜☆
「は〜い」
形ばかりのおざなりな返事をして母親の3歩後ろを付いて歩く。

今日は中学校見学の日。

小学校3年からテニスをしている俺は、テニスの名門青春学園中等部に入学しようと母親と見学に来ていた。

白い大きな校舎と広い校庭。
そして…。
校庭の倍近くはありそうな、広い広いテニスコート。

…広いにゃ〜vv
入学すると、ここでテニスができるのか。と思うと、ワクワクしてきた。

「コラ!エージ!!!」
襟首をつかまれて引き戻される。
「ごめんにゃさい〜」
しぶしぶ付いていく事にした。

退屈で意味の無い、長いだけの学校案内が終わると、校内自由見学の時間がやってきた。

「エージ、どこ見たい?」

「……………………」
突然言われてもな〜。
親と一緒って所がバカバカしい。

…!!!
ひらめいた!!!


「エージ!?」
追いかけてくる母親を尻目に、英二はダッシュで体育館を逃げ出した。

ここまで来れば追いつけないだろう。
ハァハァと息をついて腰を下ろす。

顔を上げてみればそこは…テニスコートの目の前だった。

わぁ〜!!!
何度見てもため息の出るくらい広いテニスコート。
学校の設備でここまで広いのはあまり見ない。

チョットくらい…いいよね?

関係者以外立入禁止の立札にゴメンといいながら、英二は中に足を踏み入れた。

スゴイにゃ〜☆
すっごくすっごく広いのに整備が行き届いている。
その綺麗さがテニス部の規律の厳しさを物語っていた。

いいにゃ〜☆ここで打ちたいな。
一つ一つ触れていく。
ネット、審判椅子、白線…。
一面、一面。
そして、コートに大の字になって寝転んでみた。

落ち着く。
ここでテニスしたいにゃ〜。
空は蒼く澄んでいて日差しはあったかくって。
うとうとしかけていた時だった。

ザァァァ…

急に強い風が吹いて、桜の花びらがひらひらひらひらと舞う。

同時に髪も風になびいて、視界がさえぎられた。
びっくりして身を起こすと、人の気配がして振り返った。

桜の木の下にたたずむ一人の少女?イヤ少年?

色素の薄い茶色の髪に、とても整ったキレイな顔。
白く伸びる腕と脚。
線の細い腰。

ひと目でココロを奪われた。

桜の精…かと思った。

あんまりキレイなので、しばらく見つめていたら、向こうから近づいてきた。

「どうしたの?」

より近くで見るその人はニッコリ微笑んで、全体的に白く薄く美しかった。

あまりに近くで見てしまい、心臓が飛び出そうな程ドキドキした英二は、何も言えずに逃げ出してしまった。

………何だったんだ…今の。
あがる息を何とか押さえながら、テニスコートを振り返る。
夢…かな!?
やけにリアルだったけど。

思えばアレが初恋だったのかもしれない。
と、英二は3年6組の自分の席で考える。

あの後桜につつまれた思いで、何度も何度も夢に見た。
理想の人。憧れの人。
まさか男だとは思わなかったけど。

アノ時からずっとずっとオレのココロを独占している桜の精は、今ここにいる。

今ここに。
オレの隣に。

気持ちが通じて。

オレはきっとこの手を離せない。

桜の花びらの舞う頃、あのテニスコートに立てば…。

今も夢見る『運命の出会い』




〜Fin〜

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